「てんちょー」
「はいはい」
バイトの高校生が情けない声で呼んだ。タバコを灰皿に押し付けて、俺は部屋を出る。
ここ、歌館ヒロバは駅前にあるカラオケ店で、8階建てのビル丸々一棟が店舗だった。
フロアごとにコンセプトが設定され、安価で長時間の利用が出来る、至ってよくある店だった。
「あいつ帰ったか」
「はいー」
「じゃああそこだけカメラ切っといて。フロアに他の客入れてないよね」
「大丈夫です」
「オッケー」
バイトの高校生にいつもの道具を手渡される。ふと、彼の手が震えている事に気付いた。
そういえば、今日連れてきていたのも高校生だっけ。
「俺怖いっスよ……」
「大丈夫大丈夫。君は普通に恋愛して、普通にお付き合いしなさいよ」
「うう……」
多感なお年頃だから、監視カメラを興味本位で覗いて、その有様に怖くなったと言うところだろう。頭を撫でると、猫みたいに目を伏せて少し安心した顔をする。
「それに、セックスって悪くないぜ?」
「っ……てんちょー、からかわないで下さい」
「はいはい。いってきまーす」
カッと赤くなった顔を笑いながらエレベーターに乗り込む。
いつものフロア、いつもの部屋に向かった。
紅谷灯(ベニヤアカリ)は、奴が中学生の頃からの顔見知りだった。
中学生当時は女みたいな顔をしていて、高校に入る頃には美青年になっていた。
今でもブチ犯したいと思うくらいには惚れていたが、もしそんな事がバレれば過保護な兄に殺されるのが目に見えている。
灯の兄には借りがあって、頭が上がらない。灯はそれを知っているし、惚れた弱みもあって、この店に来ては好き勝手していく。無神経で快楽主義の灯を、ますます殺すか犯すかしてやりたい。
「うっわくっせー……」
かちゃり、例の部屋を開けた瞬間、精液と尿の入り混じった強い臭いに鼻をつまんだ。
壁にある換気扇のスイッチを入れ、部屋の中心を見る。
ソファーの上で死んだように眠る、学生服の高校生。シャツは肌けて、下半身は露わになっている。
脚側に座り、高校生の閉じた膝に手をかける。足を開かせると、濡れた下腹が目に入った。
高校生の腹には透明な液体が水たまりになっていた。そこから下に目をやると、萎えた性器があった。さらに下に目線を動かすと、赤く腫れた後ろの穴から、コポリと白濁が零れ落ちる。
どれだけしたのか、高校生の腹は精液で少し膨らんでいるように見えた。
後ろの穴に指を当て、淵を左右に引っ張ると、穴はヒクヒクと動いた。
「ちょっとごめんな」
小さく呟いてから、俺は性器を取り出し穴に当てがった。扱くまでもなく、既に固くなっている。
あんな馬鹿に騙されるお前が悪いんだよ。そう思いながら、灯の精液に自身を浸していく。
ごぷっ、じゅぽっ、じゅぷ。ゆっくりと深くまで、灯の後を追うように犯した。
いつもそうだった。灯の後始末をする時は、灯を思い浮かべながら、被害者の彼らを犯した。
「うっ……」
限界が来て、自身を抜き去る。流石に中で出す事はせず、高校生の腹にかけた。
恍惚感と虚無感にため息を吐いて、それから俺は後始末を始めた。
灯の精液を掻き出して、高校生の身体を濡れタオルで綺麗に拭ってやる。服を整えたら同じフロアの別の部屋に連れて行き、まるでなにもなかったかのように声をかけた。
腰が立たないのだろう、高校生はソファーから立ち上がれずその場に座り込んだが、それからフラフラとした足取りで帰って行った。
いつも馬鹿をする灯だったが、今回は特段に馬鹿をしたようだ。
監視カメラの映像を見ながらほくそ笑む。ああ、この時をどれだけ待った事か。
俺は、灯の携帯に電話をかけた。