左手には向葵の画像を、右手には自身を握り欲望を吐き出す。
散々犯した向葵の中を思い出しては虚しい熱を吐き出して、そしてまた熱に溺れる。
ああ、またしたい。会いたい。向葵だって気持ち良い思いしかしていないのだし、今にも死にそうな顔をしていたんだから。良い事でしかないはずだ。
連絡しようか、この写真を送ってあげたら喜ぶだろうか。それともまた、通学路で待とうか。
そんな思いに耽っていた時だった。携帯の画面に緑島三十里(リョクシマミドリ)からの着信が表示される。
緑島はいつも利用しているカラオケ屋の店長だった。オレの兄貴と同級生で、兄貴に恩があるとかで頭が上がらないらしい。
カラオケの部屋を派手に利用しても、あいつが後始末まで勝手にしてくれる。こっそりオレがレイプした奴を追いレイプしているのを見た事がある。悪趣味な奴だ。
そんな緑島から連絡してくるのは珍しいことだった。そもそも連絡先をいつ交換したのか。
そう言えば以前携帯をカラオケに忘れていった時、兄貴経由で携帯が戻って来た。おそらくその時に勝手に登録したんだろう。ますます悪趣味な話だ。
「なに勝手に番号登録してんの、変態?」
『一言目がそれかよ。いいから一回店来い、お前に見せたいものがある』
「いや、遠慮しときます」
そう言えばこいつ、中学生当時のオレにいかがわしい視線を送ってきたんだよな、という事を思い出す。
見せたいものってこいつのイチモツ?なんて考えると笑いが込み上げた。
『あっそ。じゃあ彩市、紺野で検索してみな。俺は今日一日店にいるから』
緑島はそれだけ言うと通話を終了した。
彩市というのはオレが住んでいるこの都市の名前だった。紺野と言えば向葵の苗字がたしかそれだった。
インターネットの検索に言われた通り打ち込んで、予測検索で指が止まる。
彩市 紺野市長
そのまま検索をかけると、彩市の現市長である紺野という男の情報が出てくる。家族構成すら公表されていて、名前は出ていないが有名大卒の長男と、荒天高校に在学中の次男がいるらしい。
荒天高校と言えばまさに、オレと向葵の通う高校だった。
偶然の一致と笑い飛ばすほど楽観的にはなれない。なにより、緑島がわざわざ連絡を入れてきた意味。
オレは少し頭が痛くなって額に手を当てた。面倒な事になりそうな予感は、概ね当たるものだった。
カラオケ屋に着くと、案内されたのはいつもと別の部屋だった。手持ち無沙汰になって、適当に曲を入れるが歌う気にはなれなかった。
こんこん、かちゃ、ばたん。
「お飲み物お持ちしました」
「頼んでないけど」
部屋に入って来たのは店員で、2人分の飲み物を机に置いた。
「あ、店長からです」
「そう。ありがとう」
声をかけると、ギクシャクした動きで作り笑いを浮かべ、そそくさと部屋を出て行った。
昨日、カラオケ屋を出る時にカウンターにいたのも確かあの店員で、今と同じように青ざめていた。向葵との事をどこかで見られていたのかもしれない。と、出て行く背中を見ながら思った。
グラスの中身は鮮やかなオレンジ色と、透明のものだった。オレンジの方には花のついたマドラーが刺さっていた。
変に暑い部屋なのもあって喉が渇いたから、透明な方を一口飲む。中身はジントニックらしい。もう一口飲んでから、エアコンの温度を二度下げた。
「よお、やっぱり来たんだな」
部屋に入ってくるなり、緑島は楽しそうにそう言った。腹立つ表情に舌打ちをして一瞥する。
「見せたいものって?」
「今映す」
緑島がテレビ台の下にある機材を操作すると、画面がパッと変わった。カラオケの広告画像から一転して、この店の一室が映った。
「ハッ……悪趣味かよ」
その映像は考えるまでもなく、オレと向葵が入った部屋のものだった。
「監視カメラは義務だからな」
映像は編集されているらしく、2人は既に服を乱して縺れ合っているところだった。
部屋の角から撮られているが、画質は良く、隠し撮り風のAVと思えば出来は悪くなかった。
ごくり、向葵とのセックスを思い出して喉が鳴った。誤魔化すようにジントニックを飲んで、それから違和感に気付く。
肌がピリピリと、空気の僅かな動きにも反応しそうなくらい敏感になっていた。それからどうしようもない程の幸福感に包まれる。意識が朦朧として、それが強い眠気だと理解する頃には、オレは眠っていた。
油断していた。別の店員が飲み物を持ってきた事、無色透明のグラスと中身。一口飲んで問題無いと判断してしまった。
けれど、半覚醒しただけのオレの頭はそんな事を悔やむことも出来なかった。
「あ……ん……」
緑島がオレの腕を掴んでいる。掴まれたところが熱くでビリビリと痺れるようだった。
シャツの裾から緑島の手が入り込み、胸の飾りを強く潰した。
「あっっ……んっく、ああー……」
そのまま捏ねられると下腹に熱が集まる。薬のせいで身体は動かないのに、馬鹿みたいに敏感になっている。最悪なことに、今のオレにはそれさえも嬉しく思えた。
「お前も調べただろうが、紺野向葵は現市長の息子で次男だ。黒い噂もあるし、紺野の長男は潔癖な完璧主義者らしい」
オレに跨り肌を撫で回す緑島が淡々と話す。使えないオレの頭はほとんど右から左へ聞き流し、断片的に単語を拾う。
「監視カメラの映像、お前らが使ったグラス、証拠写真。口止め料は一千万てとこかな」
緑島は口角を上げていやらしい笑みを浮かべた。
「まあそんな金持ってるわけないだろうから、身体で払わせてやるよ」
「っあ……」
乳首を爪で抉られ、それさえ身体の奥がジンと熱くなる快感だった。そんなオレを嘲笑う、緑島はオレの口を口で塞いだ。
乱暴なキスに自身が勃ち上がるのを感じた。舌先が吸われ、咀嚼するように噛まれ、飲み込めない唾液に溺れる。
「は……ん、んっ」
呼吸の仕方がわからなくなったみたいだった。口を開いて酸素を求めるたび、鼻にかかる甘い声が出る。その声が自分の物だとよくわからなくて、なんだかエロい声が聞こえるとすら思った。
「ああ、やべーな。スウェットの上から勃起してるの丸わかりだ」
「アアアッあっ、あっっ」
厚手のスウェット越しに握られて、それだけでイきそうになる。絶大な薬の効果で脳天を貫く快感に悶えて喘いだ。
「はははは、あの灯がちんちん揉まれて気持ち良さそうでちゅね~」
「んんっ! んっ!」
「おいおい、これだけでイくなよ」
布ごとゴシゴシ扱かれてイきそうだった。腰をソファーに押し付けてビクビク震えながら果てそうになると、緑島の手はあっさりと離れる。
殆どイきかけた身体だったが、物足りなさよりも、強すぎる刺激の余韻に浸るだけで息も絶え絶えだった。
けれどそれもインターバルに過ぎない。緑島はオレのスウェットとパンツを掴み、膝まで一気に下ろす。
「灯、お前のちんこ、漏らしたみたいにぬるぬるだ」
「んはあ……ああ……」
小馬鹿にしながら指が撫で上げる。完全に勃ち上がって晒した裏筋を、ツーっとなぞられ、期待するみたいにカウパーが溢れた。
でもそれだけだった。緑島はオレの根元を親指と人差し指で輪っかにしてきつく締め上げ、ニヤニヤと意地悪く笑う。
「イきたいか? おねだりしてみろよ」
「ん……イき、た……イかせて……」
快楽で馬鹿になった頭が甘えた言葉を吐き出す。緑島は満足気に笑うと根元をさらにキツく締め付けた。
「ハッ、お前可愛いな。いいよ、空イきなら許す」
「ああっあ、あ、あ、あ」
根元を締められながら激しく扱かれ、オレは仰け反り喘ぎ、射精しないで果てた。身体をビクビクと震わせて、脳が痺れるほどの快感にただただ喘ぐ。
オレがイったのがわかっていながら、緑島は扱くのをやめない。連続で二度三度と空イきさせられて神経が焼き切れそうだった。
度の過ぎた快楽にも幸福感に包まれ、喘いで悶える事しか出来なかった。
「イかないとずっと気持ち良いだろ。お前こういうの好きだもんな。灯のちんこも塞いでイかないようにしてやろうな」
緑島はそう言うと扱く手を止め、少し間を置いて根元を締めている手も離す。けれどそれでイけるわけでもない。
刺激の無くなった一瞬が永遠にも感じられた。例え空イきだろうとなんだろうともっと欲してたまらなかった。
「さすがにちんこは処女だろ?」
テーブルの上、オレンジ色の飲み物に入っていたマドラーを性器の先端に押し当てて聞く。
そんなことしたら壊れちゃう、壊して。期待でカウパーが溢れた。
ずぶっ、容赦なく突き立てられて、狭い穴を押し開きながらマドラーが奥まで入った。
「くあっっっ……」
声も出ない。目の前がチカチカ光って、身体がブルブルと震える。裂けるような痛みも痛みと理解できない。ただ熱くて強い衝撃が、それがキモチイイのだと身体は誤解する。
「いい飾りじゃん。一生こうしてろよ」
緑島はマドラーについた花飾りを指で突いて笑った。それから携帯を取り出し、何枚か写真を撮る。可愛い可愛いと揶揄して、マドラーを刺されても勃起したままの性器を笑った。
「灯、こっちはどうなんだ」
緑島の指が後ろの穴に触れた。
「お前バリタチだもんな。ケツ使ったことないんじゃないか? それとも、ああほら、オニイチャンに犯してもらったか?」
そんなわけがないと知って嘲笑う。オレが兄貴に抱かれる事が決してなかったのを知っていてわざわざ言う。緑島の悪趣味な性格に、薬さえ効いてなければ蹴り倒していた。
「じゃあハジメテって事で?」
散々溢れさせたカウパーを潤滑油に、緑島の指がねじ込まれる。優しさなんてない侵入に、ハジメテにしては上手く呑み込んだ。
2本目の指が穴を開いた。カウパーでは滑りが足りない。ずりずりと内壁を擦りながら、浅いところを出たり入ったりする。
「や、めろ……」
少し正気に返ったオレが言いながら手を伸ばすと、緑島に手首を掴まれ、勃起したままの自身に導かれる。
「てめえのちんこでも弄ってな。上手く抜けたらイけるかもしれない」
「アッんんっ」
深く刺さりっぱなしのマドラーに指がコツンと触れる。それだけで電気のような快感が全身を駆け巡り、オレははしたなく喘いで悶えた。
「くっそ、締め付けがキツすぎんな。こっちも馬鹿になれよ」
「んん、ん、」
緑島の自身を受け入れるには狭すぎる穴を、指が上下左右に無理やり揺すった。乱暴にしたところで括約筋は緑島の指を締め付け、その感覚に身体は快楽を覚えるだけだ。
「はあ、仕方ねえな。お前、オクスリ大好きだもんな?」
にやっと笑った緑島が、テーブルからそれを取った。尻の穴に入れた2本の指をぎりぎりに開いて出来た隙間に、ゆっくりと注がれる。
酒と薬の混ざった眩しいほどのオレンジが。
「ひ、あ……」
直接的になにかを感じるわけではなかった。けれど、自分の穴にオレンジの酒を注がれていくのを見せつけられ、身体がそこからジワジワと熱くなっていくようだった。
先に薬の入った酒を少し飲んだだけでこの有様だ。直腸から直接吸収してみろ、どうなることか?
「お漏らしすんなよ、もったいねーな」
ずぐっ。
「うっ、あ、」
ずるっ、じゅちゅっ、ぐちゅっ。
「はっ、あっ、あっあっ」
卑猥な水音が部屋に響く。突然突き立てられた熱いモノに、背筋がゾワゾワ震えた。狭い穴を無理やり押し入って、内臓をかき混ぜられる。
苦しい。ただひたすらに苦しいだけなのに、脳をかき混ぜられてるみたいで、ぐるぐる回る世界でそれが気持ち良かった。
「ああっ、すげー可愛いよ、お前のケツ穴」
「あううっ、ふっ、ううっ、うっ」
「お前は可愛くねーけどよ、ケツ穴は俺のちんこ大好きって、いっぱい締め付けてくる」
「ああ、あっ、はあ、」
じゅぷじゅぷと、上から押さえつけられるように穿たれる。
「アアアアッ」
緑島の先端がそこを抉った。恐ろしい程の快感に目を見開く。
「ここか、お前のイイところ」
「っあ、あーっ、あーっ」
緑島は同じところばかりを狙い、自身を擦り付ける。そのたびに、そういうおもちゃにでもなったみたいにオレは声を上げた。
堪えようにも耐えきれず喘ぐ。前立腺を緑島が潰すたび、身体の内から湧き上がる幸福にも似た快感。
痛いわけでも悲しいわけでもない。それでも目端から涙が溢れる。声を上げて鳴いた。頭がおかしくなる。気持ちいい。
「俺の想像の100倍可愛いよ、灯。もっとイけ」
「んあっ……くうっあーっ、あーーっ」
全身が震える。マドラーの刺さった性器を握られ、深くまで犯される。当然のように果てて、中が戦慄くように緑島を締め付けた。
「くっそ、イイ、イくっ」
イって痙攣するナカが気に入ったらしい。緑島は数回腰を打ち付けて奥深くに吐精した。
腹の中を満たされる事に幸福感を覚えた。
緑島の膝に乗って揺さぶられる。その頃には薬が抜けてきていたが、散々繰り返した絶頂のおかげで身体は弛緩し上手く動かなかった。
体格差はそんなにない。膝上の高さの分緑島を見下ろす。奴はオレの鎖骨や首筋に跡を付けた。
「こう見えてお前のこと、少しは好きだったんだぜ」
緑島が耳元で囁く戯言も聞き流した。いつまで続くのか、緑島の精液は抜き差しするたびに溢れてソファーを汚す。
「さすがに萎えたか」
「ん……あ……」
マドラーが刺さりっぱなしの性器を握られ、上下に数度擦られる。
それまでの責めに比べたら話にならないくらいささやかなものだ。けれど、疲れ切った今のオレにはそれくらいが心地良かった。
「灯」
オレの手を掴んでそこへ導く。射精を阻む忌々しいその、花飾りが指に引っかかった。
「自分で抜いて」
「う……」
マドラーが反時計回りに捻られる。何故あんなに快感を覚えたのかわからないほど、引き裂けるような痛みに呻く。
こんなもの。一気に引き抜くと、尿道が熱くなって尿意が込み上げる。
漏らすかもしれない、咄嗟に思ったオレを襲うのは痛みだった。
「あぐああっ」
性器を握り、再びマドラーが奥まで入れられる。潤滑油もなく皮を引きずりねじ込まれ、込み上げていた尿も押し返される。
緑島は容赦なくそれを繰り返した。
「あああっうぐうっ、ひあああっ、あああ」
「さすがに灯でも尿道抉られんのは堪えらんないよな」
繊細な穴を乱暴に扱われ、声は押さえられなかった。緑島にみっともなく縋り付いて、堪えようのない痛みに涙が溢れた。
酷い責め苦に悶えていると、数回目で緑島が吐精する。
「あー、楽しかった」
ようやく満足したらしい。緑島は自身を引き抜くと、オレをソファーに横たえさせる。
あっさりと引き抜かれたマドラー。弄ばれた穴は赤く充血して、ぱっくりと口を開けている。
堪える術なんてなく、込み上げたものをそのまま垂れ流した。カシャカシャという撮影音は確認するまでもない。
携帯越しに緑島の笑う口元が見えた。
「みっともねえ……灯、今日からてめえで後始末しろよな」
臭い。白と黄色の混ざったそこを舐めさせられる。頭を踏まれ、水溜りに顔を押し付けられた。
舌を出して犬みたいに舐めろ。緑島の変態趣味には付き合えず、逃れる事も出来ないから汚水に顔を浸すだけだった。
「灯、これで終わりと思うなよ。これまでの分たっぷり楽しませてもらうからな」
鼻と口が水溜りに浸かるよう、緑島の足がぐりぐり押した。
緑島の携帯からは喘ぎ声が聞こえる。きっと、さっきまでの様子を動画でも撮っていたんだろう。
オレを脅すものをたくさん手に入れて嬉々とする緑島。
こんなはずじゃなかった。
そう後悔したところで、坂を転げ落ちるように、オレの人生は加速して狂い始めていく。
これはまだ、始まりに過ぎない。