報告書
紅谷灯 21歳 無職
県立小学校、市立中学校卒業
私立荒天高校入学
サッカー部では一年生にして活躍を見せる。インターハイでは大量得点をし、荒天高校を優勝へ導く。
選手権では関東予選から素晴らしい活躍を見せるが、年末・年明けに行われた全国トーナメントでは姿を見せず、荒天高校は初戦敗退した。
メディアの報道で騒がれるが、荒天高校の関係者は一切沈黙を貫き、情報は秘匿された。
紅谷灯は一年時の一月末に退学処分となっている。理由は明確にされていないが、薬・酒の使用や他生徒との喧嘩があったと噂されている。
同年五月に少年院に入り、1年4ヶ月で出院する。
出院後は義兄の元で生活、現在は一人暮らししているが義兄の支援によるものである。
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元ヤクザの俺が、元警官を経て元自衛官の白杜(ハクト)と組んで人探しの仕事をしているのは、特に深い訳があるでもなく、単純に高校時代の顔見知りだから、と言うだけの理由に過ぎない。
そしてまた、市長の秘書が内密に仕事を頼んできたのも、そいつが高校時代の顔見知りだから、という理由に他ならない。
いや、これでも少しは信頼されていると言うなら悪い気はしないが。
「見つかったか」
「ああ、これだな」
「あかり」と言う名前だけを頼りに、件のカラオケ屋に張り込みをすること三日、そうと思わしき人間の写真を撮った。
そこからインターネットで検索をかければ意図も容易くヒットする。情報化社会の便利な点でもあり、恐ろしい点でもあった。
白杜のタブレットに映し出されているのは、インターハイで高校を優勝に導いた天才サッカー少年として新聞に報じられた「紅谷灯」の写真だった。
屈託無く笑う表情はあどけなくて可愛らしいくらいだ。
こんな少年が何をきっかけに薬物を使って高校生をレイプするまでに至ったのか。その転落の人生に打ちひしがれる彼を想像するだけで身体が震えた。
「裏どりは俺がする」
「よろしく」
主にネットから情報を引き出すのが白杜の役割で、俺はツテを使ってネットには無い情報を引き出すのが役割だった。
もちろん白杜の自衛官時代の友人や警察関係から情報を得る事もあった。しかし、今回については俺の方が相応しい案件だ。
「……こいつの顔、見たな」
ぽそり、白杜が呟きタブレットのデータを引っ張り出す。それは白杜が半ば趣味で集める非公式的に制作されたAVの動画や画像だった。
白杜曰く、失踪した人間が意外と映っていると言うが、その動画で抜いているのだから単なる悪趣味でしかない。
それを言うと「お前よりマシ」と反論されるが、たしかに、と苦笑するしかなかった。
『っひぐああああっあっあーっあーっああああ』
『あひいっっあーっ』
タブレットから嬌声が響いた。画面には盗撮らしき映像が流れているがブレて乱れていて見づらい。けれど、アップで映された顔は確かに紅谷灯だった。
「レイパーが痴漢にアンアン喘がされてるのどう思う」
「さあな」
ただ、快感で歪んだ表情にはそそるものがあった。思わず舌舐めずりすると、白杜がジトッとこちらを見ている。
「悪趣味」
「はは……」