燻るもの

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"っっやめで、やめてええ"え"え"」
 ジュッ。
「キャアアアアア」
「きゃあってお前生娘かよ(笑)」
「ああ…ああ……」
 右腕左腕をそれぞれ矢地(ヤジ)と卯妻(ウツマ)に掴まれ、肩幅に開いた膝立ちの間に垂れ下がる可哀想なソレに、火のついたタバコを押し付けた。
 叫んで叫んで泣き出して、しまいには黄色いみっともないものを垂れ流す。
 そんな様が楽しくてたまらないから、俺はもう一本のタバコに火をつける。
「ニコチン足りてないんじゃないの?(笑)」
「ああ"っ、あ、あ、あっ、あ"あ"あ"あ"」
 絶え絶えに漏らしたソレで鎮火される。チンだけに?つまらない。
「なあ、泣くなよ。お前が今後二度と女を抱けなくなったところで、一生童貞で過ごすのは決定事項なんだから」
「ひぎうっ」
 押して潰して続ければ、最後には破裂してしまう。そんなの可哀想だから、一つ選択肢をあげよう。
 俺は上履きの先を汚水溜りに付けて、それを顔の前に差し出す。
「舐めるか、踏み潰されるか。簡単だろ?」
 泣きながら自分の出したものをえづいて舐める様には、さすがに興奮した。



****10年後****

「どこでどうして、こんな事になったんだろうね」
「はあ、はあ、はあ……」
 頭を撫でる手が大きくて、怖く見えた。
 微笑みながら首筋に唇を寄せてくる。
「痛っ……」
 噛み付かれ、吸い付かれ、ゾワゾワとした不快感が身体を襲った。
「たしかに僕はもう、女の子を抱けなくなったよ」
「ひ……」
 傷口を親指の腹が擦り付ける。ジリジリとした痛みと恐怖で身体がすくみ上がる。
 真っ赤なシルクのベッドの上で逃れられない。
 背中で腕から拘束されているのだけが原因とは言い難い。
「それでもいいんだ」
 首筋から、背骨をなぞっていき尻穴に触れられる。気持ち悪くて身体に力が入り、穴が微かに指を締めたことを喜んで、口角を上げて微笑む様が気味悪い。
「矢地と卯妻のこと、覚えてる?」
 どうしてそんな事を?
 疑問を率直に顔に出していたらしい。
 単純な俺をせせら嗤う。
「僕が抱けない代わりに、彼らに抱いてもらおうね?」
 そう言うと、扉の方に声をかける。きていいよ。
 そうして扉から現れたのは、高卒以来10年振りに会う、矢地と卯妻だった。
 ガタイだけは高校の時からよかった。俺を殴ってここに拉致したのも、あの二人の仕業に違いない。
「ねえ、泣かなくていいんだよ」
 指が顎を撫でた。唇と唇が付きそうなほど間近で優しく言ってくる。
「これは愛なんだ。君にされたことを僕は恨んでなんかいないんだ。君を愛してるから、君にも、味わってもらうだけなんだ」
 それから手を後ろに伸ばすと、矢地が火の付いたタバコを差し出す。
 喉がヒュッと鳴った。
「痛みは一瞬じゃないけど」
 経験者は嗤って語る。
 ジュッ。
「ーーーーー」

終わり