兄弟三人仲良くできたらいいのに、連れ子の三男は潔癖の長男にいつも折檻された。
「お前のせいでっ……俺たちの家族がっ」
「うっ……ぐっ……ぐあっ……」
バシッ、バシッと肉の叩かれる音がする。隣の三男の部屋で、毎日毎晩、長男は飽きもせず三男を叩いた。
悪いのは浮気して外で女を作り、孕ませた父親で、さらに前妻を追い出したくせに、俺たちを残して勝手に後妻と事故死したんだから天罰が下ったんだろうと思っている。
長男はとっくに社会人、俺も専門を出て仕事に就き、三男は大学生だった。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「聞こえないぞもっと腹の底から謝れ」
「うっぐ……ごめんなさいっ……ひっ……ごめんなさい」
叩く音も止まないで、三男の謝罪が始まる。産まれてきてごめんなさい、穢らわしくてごめんなさい、そうやって産まれてきたことを謝罪させる。
それからきっかり0時になって、ようやく長男は三男の部屋を出た。かちゃりと俺の部屋の扉が開いて、こちらに顔を出す。
「おやすみ」
「ん」
俺に対しては普通、より会話くらいはするただの兄貴なのに。会社でだってきっと頼れる存在で、真面目で、時々ユーモアもあって。いい人なのにな。
そんな事を思いながら、氷の袋を二つ手土産にして三男の部屋へ入る。
かちゃり。
「あっ……うっご、ごめなさ……」
「俺だよ。そのままでいいよ。冷やしてあげる」
ベッドの上でうつ伏せになり、啜り泣いていた三男に声をかけた。スウェットとパンツの降ろされた真っ赤な尻が痛々しい。
「氷おくよ」
「ひっ……あ……」
ガシャ、冷たい氷が尻の熱を吸収して緩やかに溶けていく。それだけでは退屈で、俺は氷を押さえつけてゆっくり円を描くように動かした。
「ん……ん……」
時折尻肉を割り開くと、柔らかそうな穴がヒクヒクと動いている。顔を近づけて舌先で突くと、三男の身体がびくんと跳ねる。氷の冷気が降りてきてひやっとする。
「あ……あ……」
「気持ちいい?」
「ん、もっと……じゅぽじゅぽして……いつもみたいに」
三男が甘えた声で言った。俺はいつもみたいに、舌をねじ込んで抜き差しする。
「んっあっあっひっん」
じゅぽじゅぽと音を立てて中を舌で犯していく。腸壁を舐められるのを三男はいたく喜んだ。
次第にヘコヘコと腰を振って、性器をベッドに擦り付け始める。じゅぱっ、と穴を吸うと腰がカクンと抜けたように三男の身体から力が抜けた。
「ちんこバレたなかった?」
「うん」
「仰向けで見せて。あ、ケツ痛かったらいいよ」
「平気」
短く答えて、三男は仰向けになる。股をM字に開いて、萎えた性器を晒した。陰毛はなく、プラスチック製のケースに押し込められた可哀想な性器。
「兄貴にバレたら、もっと酷い目にあったかな?」
「ん……どうだろう」
俺が聞いてみると、首を傾げて答える。そうだよね、長男だったら困惑して発狂したかもしれない。それも面白かったかも。
「可愛い弟のケツを叩くのが趣味の変態なくせに、ウブだから」
あいつはきっと童貞に違いない。一人でクスクス笑いながら、三男の手を取り下の穴へ導く。
「拡げて見せて」
「ん……」
三男は従順に従う。窄まった穴の淵に指先を当て、左右に引っ張る。肉が開いて中の赤い壁が晒された。
「指入れて、もっと拡げて」
穴を抑える指に唇を当てると、左右の指が二本ずつ、穴に入り大きく拡げられる。ぽっかり空いた穴は静かに蠢き、なにかを待っているよう。
「舌なんかじゃ奥の方届きそうもないや。入れてもいいよね」
ズボンを下ろして性器を取り出す。それを見て目を輝かせる三男には、可愛いと思ってしまう。
「はっあ、欲しい、」
腰を上げて自らむかえ入れようとする浅ましい三男の、太ももを掴んで押さえつけ、穴を上向かせる。穴に先端をあてがい、指を抜かせた。
「いいよ、あげる」
ずぶずぶと、最奥まで貫くとそれだけで三男は仰け反り果てた。中がうねり、もっていかれそうだ。それを無理やり引き抜くと、切ない声で鳴く。そんな声をあげられたら可哀想で、また奥まで貫く。そうやって何度穿ったところで、貞操帯に邪魔をされて三男の性器は勃起を許されない。
「あーっ……あっ……」
「ちんこからとろとろの精子が出てる。もう、ひと月くらい出さなくていいように、今日搾り出そうか」
「ひああっあ」
パンパンになった玉袋を柔らかく握りこむと、精液の量がにわかに増えた。ナカイキしながら勃起出来ない性器が、精液をただ垂れ流す。
気持ち良さそうな三男の、精液が枯れるまで繰り返した。
初めてその性癖に気付いたのは、五年前だった。まだ高校生の三男を、長男は容赦なく叩いた。隣の部屋で響く虐待の音が嫌いで、聞こえないふりをしていた。翌朝になれば二人とも、何事もないふりをしていた。
ある夜、隣から啜り泣く声が聞こえた。その声に俺の中の罪悪感が振り切れた。きっと叩かれたところが痛いんだ、氷の袋を持って、隣の部屋へ入る。
「んっん……あっ」
啜り泣きに聞こえたそれは、三男の自慰による喘ぎだった。長男にバレないよう静かに部屋を移動したから、三男も俺が入ってきたことに気付いていない。
「んっんっんっイくっ……」
ベッドの上で果てる姿を見届けてからハッとする。手に持っていた袋から水が滴り落ちている。
「氷持ってきたけどいらなかった?」
「あ……あ、」
急に声をかけられ、言葉を失った三男に笑いながら、俺はベッドに腰掛ける。
「驚かせてごめん。長男には言わないから。ねえ、叩かれたところ、冷やさなくて平気?」
「あ……の、冷やす……」
「どこ?」
「あの……」
なんだ、叩かれるの好きなんだ。
その日、俺の中の負い目とか罪悪感は吹き飛んだし、兄貴への嫌悪感も消え去った。
歪な兄弟はさらに歪んで、三人ズブズブ落ちていくんだ。
今夜もまたーー。
終わり