「あっあっあっ」
双子って残酷だ。中身はまるで違うのに、外見ばかりがそっくりで。
僕を穿つ彼の片割れは死んでしまった。白い棺桶の中に綺麗な顔が眠るように入れられている。その横で見せつけるように僕たちはセックスしている。
後ろから獣みたいに何度も腰を打ち付けて、中に吐かれた精でお腹はいっぱいだった。
「くっ……う、」
果てて小さく呻くその声が、死んだ彼とそっくりだなんて、言ったらきっと嫌な顔をするだろう。
僕は死んだ方と恋人同士だった。生きている彼は僕をずっと見ていた。僕はその事を知っていた。
「あっあっ」
深くまで貫かれる。死んだ方の彼はそこまで奥には来なかったよ、なんて、ふふふ、死んだ彼に失礼だね。ああ、でも、ああ、彼はもう死んでしまったんだね。
「雀矢(じゃくや)、起きれる」
明け方すぎ、軋む体を起こされる。白いシャツに黒いネクタイ、黒のスラックスがとてもストイックに見える。この下にあんな獣がいるだなんて、死んだ人の横でセックスする変態だなんて、とても思わせない。
「うん」
僕は芽白(めじろ)の手を取る。柔らかい手から熱が移る。
「ん……」
立ち上がろうとすると、足の間に白濁が伝った。それを見て頬を染め、芽白は照れたように笑う。
「ごめん、止められなくて」
「大丈夫だよ」
穴に力を入れてこぼれるのを止めようとするけれど、どうやら無理らしい。僕はそこらに放ってあるパンツとスラックスをはいて、シワだらけのワイシャツの裾をねじ込んだ。
「ねえ、少しだけ、二人にしてもらっていい」
「……ああ、うん、そうだね。飯、準備しておくから」
「ありがとう」
僕が棺桶に視線をやると、理解した芽白は部屋を出て行く。襖が静かに閉まり、音のない部屋で僕は彼と二人きりになる。
棺桶の窓を開けると、白い顔が眠っている。
「鶯士(おうし)」
名前を呼んでも目覚める気配はない。
君の片割れは、君とは似ても似つかないよ。
まるで眠っているだけのようにしか見えないのに、唇を重ねると、泣きたくなるくらい冷たい。柔らかくて甘く熱のあった彼はいない。
「鶯士、僕も一緒に眠りたいよ」
もう一度キスをして窓を閉めると、襖が開いた。そこには心配そうに立つ芽白がいる。
双子って残酷だ。中身はまるで違うのに、外見ばかりがそっくりで。
優しい芽白に縋れば、懐かしい鶯士の姿を見てしまう。
鶯士に会いたくて芽白に触れれば、そこにいるのは芽白でしかない。
よく似ているのに、よく似ているだけでしかない。
「芽白……」
頭を彼に預ければ、背中を優しく抱いてくれる。この温もりが誰のものかわからないよう、僕は目を瞑った。
終わり