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「はい、はい……ええ、そうですね。僕も探してみます。はい、なにかわかったら……はい。失礼します」
 同僚の先生から、行方不明生徒が出たと連絡が来る。
 僕は保健室の先生をしているから、全ての生徒と関わりを持つわけではない。しかし、いなくなった生徒はよく怪我をしては保健室に来ていた。
 蒼山入(アオヤマハイリ)。彼は不良で、喧嘩が絶えなかった。ある時には酷い怪我で血まみれになっていた事もある。
 わけはなにも聞かず、甲斐甲斐しく世話をしていたら、いつの間にかよく保健室に来てくれるようになっていた。
 僕はその頃の事を思い出して、つい笑みがこぼれた。
 そうして、クローゼットの扉を開く。
 そこには秘密と嘘と愛と、僕の愛しい生徒を隠していた。

「意外だね、不良なんてしてるから無断外泊なんていつもしてるのかと思った。でもよかったじゃない。親御さん、心配しているみたいだよ」
 声をかけると、クローゼットの隅っこで身体を震わせ怯える入くんの姿。
 連れてくる時に少し乱暴にし過ぎて、指を数本折ってしまったからね。痛みと恐怖と混乱で、わけがわからないんだろう。
 入くんの口にはガムテープを貼った。腕は背中で束ねて拘束し、足は膝で曲げた形で縄を掛けている。そのおかげで、窮屈そうな体育座りの格好を強いられていた。
「ごめんね?今晩はそこで寝てもらうから」
「っ……」
 じょろっ……。
 そっと頬に触れると、目を瞑って身体を硬くし、徐々に足元を濡らしていく。もしかしたら、暗いところや狭いところが苦手なのかもしれない。
 お漏らしをしてしまった入くんには、ますます愛しさが募る。
「GWが終わるまで、仲良くしようね。入くん」