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 入くんの足を開かせて、萎えたペニスをじっと見つめた。毛は生え揃っているが、仮性包茎だろう、先端は皮を被っている。
 かぷっ、玉を咥え込む。
「うっ、ん、」
 じゅるじゅると吸い付くと、入くんが悩ましげな声を上げた。
「は、あ、せんせ、腕痛い、外して」
 入くんのお願いに、僕は一瞬動きを止めてしまった。聞かなかったふりをして、入くんの竿を舌で舐める。手を使わないでするから、顔を擦り付けているようだった。
「先生、無視しないでよ」
 ちゅっ、ちゅっ、口付けながら先端へ迫る。まだ剥けていなかったらいいのに、そんなことはないだろう。いつもは皮オナしてるのかな、とか考えてしまう。
「はあっ、あ、せんせ、外して」
「んっぐ」
「いっ……」
 入くんの太ももが頭を横殴りにする。思わず入くんのペニスに歯を立ててしまい、入くんは眉間にしわを寄せた。
「ふ、痛いほうが好き?少し勃ってる」
「誤魔化すなよ」
 快楽か、痛みか、入くんは濡れた瞳で僕を見た。
「腕も足も、痛いんだよ……外せよ、逃げないから」
 睨みつけるさまは、さすが不良なんてやっているからか迫力があった。
「……だめだよ、逃げないわけがない」
 僕は入くんのペニスを握った。適当に擦ると、目を細めて気持ちよさそうな顔をする。
「俺は、逃げないから」
「どうして?こんなことされて逃げないわけない。それとも、僕の前でおしっこやうんちするの、嬉しい?そんなわけない。それなのに逃げないなんて、あり得ないよ」
 それとも入くんはそんな変態だったの?僕が聞くと、顔を真っ赤にして唇を噛んだ。
「俺のこと、信じろよ……」
 小さく呟く入くんに僕はドキッとする。でもそれだけだ。
「信じない」
 僕も同じくらい小さく呟く。僕のしていることは恋とか愛とかじゃない。許される事じゃない。最後に奇跡も待っていない。
「連休が明けたら返してあげるから」
「俺はあんたのこと信じるよ」
 入くんの言葉はどうして、僕の頭を打ち付けるような事ばかり言うのだろう。
 こんな、こんな犯罪者のなにを信じると言うのだろう。
「痛いんだ……腕も足も痛い。外したって、どうせ指が折れてて手は動かない。頼むよ、先生、ベッドにくくるでもなんでもいい、せめて、少しでいいから手足を伸ばさせて」
 きっと入くんの言う事は嘘偽りないんだろう。だけれど僕は愚か者なばかりに、入くんに逃げられないようにと、その事しか考えられない。

 僕は入くんの後ろに回った。拘束を外すと思ったのだろう、入くんは嬉しそうに頬を緩めた。
 それから僕が入くんを抱きしめて、ペニスにローションを垂らすと眉間にしわを寄せる。
 マドラーに良く似た銀の尿道ブジーにもローションを塗る。緩く勃起している入くんのペニス。先端の小さな穴にあてがうと、入くんは掠れた声で、やめてと言った。
「外してあげる、入くんが動けないくらい、イったら」
「あっっ、あっっっひいっぐ」
 一番細身のものを、ゆっくり抜き差しする。入れては抜いて、少しずつ押し進めていく。
 入る時には痛みが勝るだろうが、抜くときには快楽を見出す。いや、むしろ入くんはもう、挿れても抜いても気持ちよさの方が強そうだった。
「ああっ……っひ、あっ」
 ズルッと引き抜けば、イったみたいに身体を震わせた。優しく丁寧に、なるべく傷付けないように、尿道を犯していく。
「ひっいい、あーーっく、あ、」
 細かく震わせながら亀頭を指で撫でると入くんは大きく泣き喘ぐ。敏感なところをひたすら刺激されて、入くんの頭の中は真っ白だろう。
「はあっはあはあはあっあ、あっ、あん、ん、ん、っは、」
 切ない声で喘ぐ入くんに僕は興奮した。こんなに乱れる入くんを、僕はずっと見ていたい。
「ああっああっんあああっ」
 竿を扱きながら棒を引き抜くと、追って出るように射精した。長く続く射精を見ながら、僕は入くんの亀頭を指の腹で撫でる。
「ひいいいいっあやらあっあっんんあっあ"あ"あ"あ"」
 ぶしゅっーーー。びゅるびゅると吹き出す潮に、僕まで果てそうだった。
「んあっ、ん、あっあっあああやだぁ、っも、だめっああっああああ」
 そのまま指を止める事なく亀頭を擦り続ける。入くんは泣いて懇願した。全身を硬くして、苦しそうな顔で喘ぐ。
 ぷしっーー。
「ひいいっひいいせんせやめてええやめてやだやだやだあああああ"あ"あ"あ"」
 もう一回、もう一回と繰り返す僕を入くんが泣き叫ぶ。
 びゅくっ、びゅく……。勢いも量も減って、それでも潮吹きをする入くんに感嘆の息を呑んだ。
「えう……う……あ……」
「入くん、気持ちよかった?」
「あ、あ……さわ、な……」
 潮吹きを繰り返した入くんの身体はひときわ感度が高まっている。よだれを垂らす頬を撫でたって、今の彼には耐え難い快感だった。
「口の中も性感帯になるんだよ」
「ん……ん……」
 僕は入くんの口の中に指を入れる。人差し指と親指で、舌の付け根からマッサージするみたいに挟んで動かすとトロンとした目をする。上顎を撫でるとくすぐったそうに喘いだ。
「まだイけそう?」
「んあ……は……」
 出し尽くしたのか、萎えてしまった入くんのペニスを軽く扱くと、出てきたのは尿だった。
 しょあしょあと音を立ててベッドを濡らしていく。それが気持ちいいのか、入くんは微笑んだ。
「今から、外してあげるから……」
 すっかり弛緩した入くんの手足の拘束を解いた。入くんの左手小指と薬指、右手の人差し指と中指は腫れて変色していた。これでは確かに手は使えないかもしれない。
 けれども僕は不安が拭えなくて、入くんの首に首輪を、手には身体の前側で両手首を纏めて拘束した。
 ベッドを片付け入くんの身体もタオルで拭った。
 僕は入くんを後ろから抱きしめる。僕の腕が拘束するように、逃さないように。こんなことに意味があるのか、たくさん嫌なことが頭を渦巻いて、朝が来るまで眠れなかった。