5/7

 シーツを張り替えたベッドに入くんを寝かせる。その上に覆い被さるよう跨り、入くんの手を握ってベッドに押さえる。
 明日には、入くんを家に帰さなければいけない。だから僕は1日かけて、入くんを隅から隅まで忘れないよう、じっくりと脳に刻み込む事にした。
 唇を重ね、舌を絡める。深く深く、入くんを味わう。
 例えば僕が食べ物を口にするたび、入くんの事を思い出せるよう、柔らかい舌を舌で、歯で、しっかりと感触を確かめた。舌を軽くとはいえ噛まれた事に驚いたのか、入くんの手が僕の手を少し強く握った。その感覚も、僕は一生、忘れたくない。
 例えば飲み物を飲んだ時だって、入くんの唾液を思い出せるように。僕は執拗に、何度も繰り返した。
 時間は残酷にも過ぎて行くから、僕は、入くんの顔にキスを落としながら、入くんの耳に舌を差し込んだ。外耳を唇で食み、耳たぶに吸い付く。耳の穴に舌を入れられるのがくすぐったいのか、入くんは少しだけ身をよじらせて、小さな声を上げた。反対側の耳にも繰り返す。
 それから首筋に舌を這わせる。大人のそれにほど近く成長した喉仏を慈しむように舐めた。
 入くんと別れた後は、きっと二度と会う事はない。その後も成長を続ける入くんは、どんな大人になるのだろう。今の僕には想像できなくて、目の前にいる入くんを決して忘れないようにするので必死だった。
 入くんの鎖骨に、痕にならないようキスをしながら、入くんの脇に鼻を寄せる。薄い脇毛に汗をかいたそこの臭いを、鼻腔いっぱいに味わう。それから舌を這わせて、脇毛の感覚と一緒に味わった。
「そ、んなとこ、っひ、」
 意外とくすぐったがりなのか、入くんは身体をくねらせた。そんな様子が可愛くて微笑ましく思いながら、二の腕にキスをする。入くんはそれにも少し上擦った声を零した。
 反対側の脇にも同じことをして、それから入くんの胸の突起に顔を寄せた。
 赤く色付いて、ツンと尖っている。あまりいじられた事のない入くんの乳首は、赤く実っている。入くんが大人になって、誰か僕の知らない人とセックスをして、色を変えたり形を変えてしまうのだろう。
 本当は僕が育ててあげたい。けれども、汚れを知らない今の入くんを存分に味わえるだけでもありがたい事だった。
 まるで女神様に挨拶をするように敬意を払って軽くキスをする。それから乳輪に沿って舌を這わせ、乳頭を軽く吸い上げた。
「ンンッ、ん、や、」
 本当は引きちぎれるくらいに噛み付いて、痕が残るほど嚙みしめたかった。でも出来るだけ優しく、入くんの乳首を確かめるように舌で舐め上げる。
 昨日のエネマグラでの快感が残っているのか、入くんは乳首を舐められて切ない声を上げた。僕の手を時折強く握る、入くんの手が愛おしい。今感じているよ、と、奥ゆかしい素振りで教えてくれる。
 片側をひとしきり味わって口を離すと、少しぷっくりとしたようだった。反対側と比べると色も尖も顕著で、じゃあ今から反対側も同じぐらいに染めてあげようと思った。
 入くんの性器は汁を零して、乳首で感じていることを如実に表していた。

 反対側の乳首も同じくらいか、むしろ色濃く色付いた頃、僕は次に入るくんの腹筋にキスをした。その頃になると、入くんの身体は触れるだけのキスでもビクビクと震えるくらいに感覚が敏感になっていた。
 昨日のエネマグラで覚えた快感を思い出してきたのだろう。触ってもいない入くんの性器は、イってしまったのかと思うくらいに先走りを零していた。
 入くんは次にそこに触れられることを期待して、大股開きで惜しげも無く恥部を晒した。性器は腹筋の動きに合わせて、息づくように嫋やかに上下した。
 はあはあと荒い息をする入くんの、欲情した瞳が僕を見つめた。いやらしく育った性器に、殆ど触れるくらい唇を近付けて、ふっ、と息を吹きかける。
「ひぁっあっあっ」
 びゅるっと、少しだけ精液のようなものを零す。いやらしい入くんに、僕はゾクゾクと言葉にできない高揚を感じた。
 入くんは続きを求めた。もっと直接的な刺激を欲して、僕を見つめた。いっそ、僕を殺しかねないほどの視線を向けた。
 それでも僕はそこを素通りする。しっかりと絡まった左手を離して、入くんの右足を上げさせる。
「な、んでっあっあ、やあ、やだ、んああっ」
 窄まり、息づく、後ろの穴に僕は躊躇なく舌をねじ込む。穴が舌をきゅうきゅう締め付け、奥まで引き込むようだった。僕は顔をこれでもかと押し付け、出来る限り舌を中に入れる。
 もっと奥、もっと奥まで。入くんの胎内を、もっと深いところまで舐め尽くしたかった。じゅるじゅると音を立てて吸い付き、舌で上下左右の腸壁を舐める。ああ、これが入くんの胎内だ。僕は必死で入くんの中に入ろうと、舌を動かす。
 僕は赤ちゃんになりたかった。入くんの胎内に着床して、入くんの胎内ですくすくと成長して、入くんの身体の中から犯してあげたい。そんなわけのわからない妄想をしながら、入くんの穴にむしゃぶりついた。どうしてそうはならないのかと、その事が不思議だと思うくらい真剣に、そう考えていた。
「あああっんっく、ひいいっや、っあ、やっだ、せんせ、せんせえっっ」
 入くんは僕を呼び、僕の右手を強く握りしめながら、身体を痙攣させて、射精しないで果てていた。胎内が収縮して、僕の舌をぎゅっと押さえつける。それを無理やりこじ開けて腸壁を刺激すると、止まない快楽に入くんは仰け反り震えた。
「ああっ……ああっ……」
 入くんは天井を仰いで、言葉を忘れたみたいに、ああ・ああと声を出すだけだった。果てた時の快感が頭の中でフラッシュバックしているのだろう。それを思い出して胎内が締まると、また果てる。果てしないドライでの絶頂を繰り返した。
 そんな入くんの胎内から、惜しみながら舌を引き抜く。入くんの性器は完勃起からは少し柔らかくなっていたが、いっそ射精したということにしてしまっても構わないほどに先走りを零していた。
 勝手に絶頂を繰り返す入くんの邪魔はしたくなかったけれど、僕は、入くんの性器にふっと息を吹きかける。ふっ、ふっ、竿から亀頭に向けて、息を吹きかけ続ける。
「ふっ……んんんっ……んああっ……っくひ、ひぃああああっっっ」
 息を吹きかけるたびに軽くイっている。一際多く先走りを零したから、それを吸い上げると、入くんは射精した。イってる最中にも吸い上げると、射精が止まらないのか精液はどんどんと溢れ出てくるようだった。
 入くんの手が僕の右手を痛いくらいに握った。縋り付いていないとどこか深い穴に落ちるかのように、入くんの手は僕にしがみついた。
 何度か射精を繰り返して萎えそうな入くんの性器。先端に吸い付きながら、空いてる左手で竿を軽く支え、亀頭を親指の腹で擦る。
 入くんはそれをもう知っているから、うわ言のようにだめだめと口にした。僕はその先まで飲み干すつもりだったから、手を止めなかった。
「ぁあああああっ」
 プシュッと潮を吹き出す。少しもこぼさないよう、亀頭を咥え込むと喉に当たり、噎せて鼻から出てしまいそうだった。
 吸い上げて、それから間髪入れずにまた亀頭を擦る。入くんはいやいやと声を上げたが、僕は次の潮吹きに備えた。プシュっ。
「ひいいいんんっ」
 身体が強張って、弛緩する。その様子を見届けてから、また亀頭を擦る。入くんは快楽に咽び泣いていた。身体をだらんと弛緩させ、萎えた性器からはじょぼじょぼと尿を排出しだす。
 吐息すら甘い喘ぎとなった入くんの呼吸音をBGMに、僕はごくごくと熱いそれを飲み干した。
 ああ、もう一度、入くんの口を味わいたい。
 入くんの虚ろな目を見つめながら、僕はもう一度、入くんの唇を貪る。
 この至福の時は、間も無く終わりを迎える。