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 散々精を吐き出して、気絶するように眠っていたのに、一晩経てば何事もなかったように目を覚ます。やっぱり若いなあと、僕は年寄り臭いことを思った。

 もうお別れだと思うと名残惜しかった。眠れない僕はベッドの上で、抱きしめた入くんを一晩中撫でて、首筋に軽いキスを落としたり、耳を食んだりした。
 本当は食べてしまいたかった。そうすれば永遠に一つになれただろう。
「んん……」
 寝起きの入くんの腰を撫でる。ずっとこうして入くんを愛でていたい。そういう思いばかりがどんどん積み重なっていく。
 僕は指をするんと走らせ、昨夜散々愛した後ろの穴に触れた。びくんと反応して、背を仰け反らす敏感な彼が愛おしい。
 入くんはすでに緩く勃起させていて、カウパーがしとどに溢れている。その滑りを借りて、僕は入くんの中に指を挿入させた。
 柔らかくて、熱くて、キュッと締まっている。その壁面のしわ一つ一つを愛でるみたいに撫でた。
 入くんとのお別れにはサプライズを用意していた。僕との事は忘れても構わない。でも、出来れば一生忘れないような、そんな記憶に残るプレゼントを、僕は計画していた。

「は……あ……」
 慣れたもので、入くんは穴をいじられるのを喜んでいた。押し殺しきれない小さな喘ぎが、僕の耳から入り脳を刺激する。
 気持ち良さそうにしているのが、僕は嬉しかった。最初に連れて来たときは狭いクローゼットに押し込めてしまったから、酷く怯えていた。今ではそんな様子もなく、快感に喘いでいる。
 ツンと突き出された胸の突起を指でコリコリと転がせば、内壁がキュンと指を締め付けた。それなのに、指をもう一本増やしたところで、柔らかい穴は僕の指を受け入れた。
 穴を開くように指を左右に開いたまま抜き差しすると、それにも入くんは喜んだ。
「ふあっ……っあっ……」
 軽くイったのか、目を固くつぶり、ゴクリと喉を鳴らす。それから入くんの瞳が、僕をじっと見つめた。
 するりと、入くんの手が僕の股間を撫でる。
「はっあ、せんせ、指じゃ足んないよ」
 ズリッと、入くんの指が布の上から先端を擦り上げる。僕はおもわず快感に震え上がった。
「先生だって……は、あ、」
 いたずらを企む子供みたいに笑って舌で唇を舐める。挑戦的な瞳で、僕を挑発した。
「俺が欲しいだろ……?」
 入くんの穴が締め付けるのと同時に、入くんの指が僕の股間をキュッと握った。
 脳が入くんに犯されてるようだった。
 血が一気に熱くなって、僕はそれだけでイってしまいそうなほど興奮した。

「はあ、はあ、はあ……」
 僕の荒い息だけが目立つ。ズボンを降ろし、熱り立つそれはしごくまでもなく、すっかり硬くなっていた。
 入くんの柔らかい穴から引き抜いた手で、僕は自身を支えた。
 本当は、ここまで望んでいなかった。触れられるだけで、入くんを愛せるだけで僕はよかった。
 でも、愛されたいと、願っていたんだ。
 僕は入くんの尻肉に自身を擦り付けた。割れ目の溝を伝わり、穴に先端を触れさせる。キュッ、キュッと呼吸するみたいに窄まり、開く蕾に、僕は堪らなくなった。
「入くん……」
 期待と興奮に上擦った声で名前を呼ぶ。当てがった先端は、いともたやすく入くんの胎内に飲み込まれた。
「んん……っく、は、」
 入くんが苦しそうに喘ぐ。本来なら受け入れ難いそれを必死に咥え込もうとしている。そんな健気な様子に、熱は増していく。
「ん……ん……」
 ゆっくりと、ゆっくりと奥へ進んでいく。まるで僕のために作られたように、入くんの穴は僕に寄り添った。
 もう少しだよ、そう呟くと、緊張したのか僕をきつく締め上げた。
「あっああっ……っひっん、くっう、うっ、」
 まただ。入くんのきつい締め付けに僕はイきそうになる。
 それをぐっと堪えて入くんを引き寄せた。僕の性器は入くんの胎内に完全に包み込まれる。ぴったりと折り重なって、快楽に落ちかけた入くんを抱きしめた。
「あ……あ……」
 切ない声を零して、上を仰ぎ見る。
 僕を感じてくれているだろうか。入くんの胎内にいる僕を、形を、熱を、感じ取ってくれているだろうか。
 僕はひたすら待った。入くんのうなじに鼻を当てて、においをうんと吸う。
 右手で入くんの下腹部を撫でた。この辺りに僕がいる、軽く押すとそれがわかった。
「はあっ……はあっ……」
 入くんは泣きながら、呼吸をするたびに僕を締め付けた。僕は一切動かず、ただ待った。
「んんん……っんん……っんっんっ……ああっあっあっ」
 身体を硬直させた入くんがびくん、びくんと震えた。静かにオーガズムに達して、それから絶頂の無限ループに入る。
 僕も堪えきれず、腰を突き上げる。大きな嬌声と仰け反る背中が、彼の快感の度合いを表していた。

 それから僕は何度も何度も吐精した。入くんの精子は尽きたのか、擦り上げると最初に少量を二度ほど出すばかりで、それからはずっと空イきだった。
 それでも僕は止められない。奥に、深くに、沢山射精した。
「あーーーっっく、んんんっ……ひうっひうっ、あ、あ、あーーーっ」
 ほとんど泣きじゃくるような喘ぎ声だった。いつまでも終わりたくなかった僕は、入くんが気絶した事にしばらく気づかなかった。


「さよなら入くん、愛しているよ」



 ゴールデンウィーク最終日、5月8日の午後10時過ぎの事だった。辺りはすっかり暗くなっており、非常に細い三日月が頼りなさげに照らしていた。
 その頃、警察に通報が入る。公衆電話からの通報で、短い内容だった。
「◯×公園に誘拐された少年がいる」
 現場は、高校生誘拐事件の被害者である蒼山入の自宅付近の公園だった。
 警察はただちに現場と、同時に通報のあった公衆電話にも駆けつける。公衆電話は公園から数キロの地点で、人影は既になかった。
「少年はどこだ」
「蒼山くん!蒼山入くん!」
 公園はそう広くないが、園周を木々が囲い、場所によっては死角となっていた。
 誘拐された少年は、死角となった木の茂みに蹲っていた。
「ああ、蒼山くんだね」
 懐中電灯で彼を照らしながら、警官が駆けつける。警官は無線で仲間に連絡してから、少年に近寄った。俯き加減で体育座りのような格好をした彼は、少し様子がおかしかった。
「大丈夫かい?」
「んぐううううっ」
 俯いていた彼の身体を起こそうとしたとき、彼はくぐもった声を上げた。口はガムテープで覆われていたが、注目すべきはそこではなかった。
 ズブズブと水っぽい、何かが抜ける音がして、それから警官と少年の間に、噴水のような水が吹き出る。それから水風船から水と空気が漏れたような音がして、悪臭が漂う。
 少年は泣いていた。
 性器には尿道用のバイブが挿入されており、持ち手についた短い長さの紐は首に巻き付けられ、身体を起こすとバイブが引き抜かれるようになっていた。
 吹き出た水は、少年の膀胱に溜め込まれていた水だった。
 その刺激によって、堪えていたのだろう、アナルに大量に詰め込まれていたビー玉を噴出する。下剤によって強制的に催された大量の排泄物と一緒に。
 その凄惨な様子を、現場に駆けつけた6人の警官は呆然と、ただ見つめるばかりだった。