今日はうっかり仕事中に柿狗くんの生放送のことを考えてしまい、仕事に集中出来なかった。
だいぶ色々なことして来たからなあ、とは言えお尻の方は全然だから、まだまだやることはあるんだ。
そんな午後、搾乳機や特製尿道パールを作ってくれた知り合いから呼び出しがかかる。
居酒屋に待ち合わせて、合流。
最近は直帰して柿狗くんの家に行くか、生放送用に資料(AV)集めたりしていたから、飲みに行くのも久しぶりだ。
「急にどうしたの、古佐治(こさし)から誘ってくるなんて珍しい」
古佐治は高校の同期で、古佐治は高卒後金属加工業系の仕事に就き、僕は大学卒業をして一般企業に就職。
高校時代特に仲が良かったわけではないが、なんとなく連絡を取り続けてきた。
柿狗くんとの生放送は内緒にしているが、男同士性癖の話しで盛り上がり、手が器用な古佐治は例の搾乳機や尿道パールを作ってくれた経緯がある。
「ああ、お前に聞きたいことあってな。とりあえず生でいいだろ」
「うん」
休日前の居酒屋は団体客で混雑しており、なかなかビールが来るのも時間がかかる。
古佐治はその間、なにやら携帯をいじっている。
僕も手持ち無沙汰に、携帯の画像フォルダを開く。
眠っている柿狗くんを内緒で撮影した一枚。薄く口を開き、無防備に寝顔を晒している。
可愛い可愛い柿狗くんに心が癒される。
「じゃあま、カンパーイ」
「かんぱーい」
やっときたビールのジョッキをカチンと鳴らし、一口飲んだ。
僕、お酒はすぐ酔っちゃうからそんなに得意じゃないんだよね。でも仕事終わりのビールってやっぱり美味しいや。
「さっそく本題なんだけど、これ、下戸(げこ)だろ」
今だにガラパゴス携帯を使っている古佐治が、携帯をテーブルに置いた。
映し出されたのは、柿狗くんの姿だ。
「……いやあ、どう見ても僕じゃないけどね」
だいぶ前の動画だ。カテーテルがピンと伸びたそれは、膀胱イチゴオレを作った時のものだとすぐわかる。
生放送で上げつつ、別に録画したオリジナルムービーが柿狗くんの家のパソコン、僕の携帯と、バックアップに僕の家のパソコンにも入っている。
何度見直したかわからない。そんな柿狗くんの姿を、見間違うわけもない。
「ああ、違う違う。こいつは柿狗だろ?それじゃなくて、この鬼ピーとか呼ばれてんの。お前だろ」
射抜くような鋭い視線に、僕は適当な笑みを浮かべて、どうしたものかと考える。
古佐治の狙いがわからないのが一番厄介なことだ。
「……その映像、どこで見つけたの?」
「お前が鬼ピーだって認めんなら、教えてやるけど?」
古佐治は枝豆をつまみ、余裕な顔で言う。
携帯の画面には柿狗くんのお○んちんから吹き出したイチゴオレが綺麗に映っていた。
「……そうだよ、それ撮ってるの、僕だ」
古佐治に作ってもらった器具を生放送に使っている以上、他の生放送内容も見られればばれてしまう。
こうやってサシで話す機会をくれたんだもの。下手に誤魔化してややこしくなるよりかは、腹割って話した方がいい、のかもしれない。
「それで、その映像、どうしたの?」
「ん、高卒連中ってさ、今でも結構頻繁に飲み会やったりとかしてんだよな。んで、その高卒連中の一人がこの前の飲み会の時に見せてくれてさ、そいつは動画サイトで見つけたんだと」
「動画サイトかあ……」
生放送配信の内容はタイムシフトによって、リアルタイムでなくとも視聴できるようになっている。
僕の場合は次の生放送をする際に前回のタイムシフトを観れなくするようにしているが、個人で放送内容そのものを録画する事は可能だ。
どうやら他の動画サイトに転載されたみたいだね。まあ、ネット上でやる以上、そうなることは目に見えていた。
とは言え、結局性器や秘部自体はこれまでに晒した事はないし、今後も晒すつもりはない。せいぜいよがってイき顔を晒している程度に過ぎない。
だから、それ程心配はしていないのだけれど。
「あー、でも他の奴ら柿狗の事はわかったみたいだけど、下戸が鬼ピーだとは思ってはいないみたいよ。お前ら高校の時もそんな仲良さそうにしてなかったしな。つか、そん時見たのこの動画だけだし」
「そん時、って事は、古佐治は別のやつ見たの?」
「見た見た。違う動画サイトでやってたんだな。タイムシフト?とかで一番新しいやつ。すぐわかったよ、俺が作った薬と尿道パール使ってんだもん」
「あ、薬すごい効き目だったよ。あれ、薄めないといけないんだね。そのまま使ったから、柿狗くんすごいことになってたよ」
「あれ、痒み抑える薬あげなかったっけ?」
「えー、貰ってないよ?一晩そのまま無理やり寝かせて、次の日すすいであげたんだけどさ」
バレてしまえばそれまで、トークが止まらなくなった。元々性癖は似たようなもので、だからこそグッズ作りも頼んだ。
分かち合う相手が出来たことで、生放送でやった内容を語り合うこともできる。
「んで、折り入ってお願いしたいんだけど」
急に真顔になった古佐治に、僕も口を噤む。
「なに?柿狗くんには触らせないよ」
古佐治にはいじめっ子なところがあるから、柿狗くんに会わせたらいいオモチャにされるのは間違いない。
「んにゃ、俺が触りたいのは、お前だよ、下戸」
「はあ?」
思ってもみない言葉に、間の抜けた声が出る。
というか、古佐治って男に興味あったんだ。
「だからー、柿狗のケツを下戸が掘って、下戸のケツを俺がいただく。したら俺も柿狗も下戸も視聴者も、みんなハッピー、だろ?」
つまり3Pしたいってこと?
「なにそれ、僕が全然ハッピーじゃないんだけど」
「俺は」
ずい、と身を乗り出して古佐治が僕に言う。
「お前のケツマンコに興味ある」
僕も噛み付くみたいに、身を乗り出して答えてあげる。
「僕は古佐治のチンコに興味ないから」
二人で微笑みあって、はたから見たら仲良しかもしれないが、僕と古佐治の間にはバチバチと火花が散っていた。
「僕と柿狗くんがイチャイチャしてるとこ、画面の向こうから見てなよ。オカズにだったら、してもいいよ?それじゃ、お勘定は僕が持つから、ゆっくり頭冷やしてね」
僕はそういい、席を立つ。
古佐治は肘をついて、僕を見つめた。
「んー、画面の向こうじゃ我慢できなくなったら、意地でも下戸のこと、犯してやる」
いたずらっ子のようにくすくす笑う。不良だった高校時代から女子の人気は高い古佐治なら引く手数多だろうに。
趣味の合う友人としては一目置いていたのになあ。
宣戦布告されたからには、負けるわけにはいかないものね。
しばらくは、柿狗くんに会うのも控えた方がいいのかなあ。
終わり