47ホットミルク

 雨が降ると頭が痛くなる柿狗くんのためにホットミルクを入れてあげる。
 ベッドの上で唸りながら、すごい不機嫌そうだったからね。柿狗くんの一番のストレスは眠れないことなんだろうな。
「柿狗くん、甘ーいの作ってきたよ」
 熱々のホットミルクが入ったマグカップをパソコンデスクに置いて、柿狗くんをベッドから起こしてあげる。
 髪の毛くしゃくしゃ、服よれよれ、顔もストレスでくしゃくしゃになってる。可愛いなあ、と跳ねた髪を撫でてあげると、んー、と唸った。
 いつも生放送で使う椅子に座らせてあげて、マグカップを慎重に手渡す。
 こぼしたら大変だものね。
 傷付く柿狗くんも好きだけど、怪我がないのが一番だし。
「あ、熱いからよくふーふーしてね」
「ふーふー」
 言ったとおりちゃんとふーふーして偉いね。でも冷めるまでは時間かかるからなあ。
「じゅる……あちっ」
 案の定舌をやけどしてしまった柿狗くん。
 柿狗くんの手からマグカップを取り、デスクへ。僕は柿狗くんの前にしゃがむ。
「ごめんごめん、少し冷ましてから渡せばよかったよね。やけどしたとこ見せてくれる?」
 生理的な涙で目を潤ませ、舌をちろりと見せてくれる。
 うーん、わかんないけど、ちょっとひりひりしちゃうかもなあ。
 じーっと見てると、柿狗くんも僕をじーっと見ていた。僕は柿狗くんの頬に手を当てる。
「じゃあ、早く治るおまじないしてあげるね」
 言いながら、柿狗くんが出した舌を唇で挟み、ぺろぺろしてあげる。
「ん、んあっ」
 柿狗くんの手が僕の胸を押したけど、力で僕に敵う由はない。
 椅子の座面に膝をかけ、上から覆いかぶさるようにして舌を嬲り続ける。次第に舌を絡めて、柿狗くんの唇に移る。唇に吸い付きながら口内に舌を這わせた。
「ん、ん」
 柿狗くんが僕の手を掴んだ。少し半泣きで怯えている。
 まだ、前に窒息させかけた事が怖いのかな。
 でも柿狗くんが望むなら、僕は柿狗くんの手に手を重ねて繋いだ。
 少し安心したのか、僕にされるがままの柿狗くんを存分に貪り、口端から唾液を垂らす柿狗くんに満足した頃ようやく口を離す。
「そろそろミルク冷めたかな?」
 じゅる、一口飲むと甘味が口に広がる。
 砂糖をだいぶ足して柿狗くん好みにしたからね。
「ちょっとぬるいかも。温め直す?」
「いい」
 手を差し出した柿狗くんに、またマグカップを渡すと、ごくごくと飲み干した。
 ふう、とため息をつくと落ち着いたみたい。
「もう寝る?」
「んー」
 僕にマグカップを渡し、手をまた差し出してくる。なんだろう?と少し考えて柿狗くんを見ると、眠たげな目をしばたかせていた。
 ああ、そういうことか、と思いながら柿狗くんの身体に腕を回し、抱っこしてあげる。
 たった数歩を歩くのも面倒ということかな。
「僕も一緒に寝ていい?」
「ん」
 ベッドに寝かせてあげると、ずりずりと端に寄って僕のスペースをあけてくれる。
 僕はベッドに静かに乗り、後ろから柿狗くんを抱きしめる。
 雨が窓を打つ音をBGMに、僕たちはすやすやと眠った。