生放送の内容を確認すると、やはり柿狗くんが5回目の空イきをする前に放送は終了していた。
完全に僕の失敗だ。
「柿狗くん、僕になにして欲しい?」
いつぞやに約束した柿狗くんと一緒にご飯の最中。
椅子に座り、僕の足の間に柿狗くんを座らせ、二人羽織のようにして柿狗くんにご飯を食べさせる。
僕が箸で与えたものを、モグモグと懸命に頬張る様子はとても愛おしい。
「ん……なに……?」
僕の問いに柿狗くんが聞き返す。目は食卓のご飯に向けられたままだ。
一緒に食事を取るようになってからは、だいぶ食欲が出てきたようで嬉しい限りだ。
「前回の生放送、僕が時間配分とかミスして、結局生放送中に5回目の空イき、出来なかったんだ」
おかずのハンバーグを一口大に箸で切り、柿狗くんの口へ運ぶ。舌を伸ばして嬉しそうに口に入れる様子は、いつ見ても下半身を直撃するエロさだ。
食事と言うのはある意味で性欲にも似ていると思う。
貪り、喰らい、自身を満たす。
だから食事の仕方がエロい人は、セックスも激しいというのが僕の持論だ。
「失敗したら罰ゲームしようかな、とは思ってたんだけど。僕の罰を僕が考えるのはおかしいでしょう?だから柿狗くん、何か僕にして欲しいこと、ある?」
ハンバーグを味わいながら、柿狗くんは僕の罰を考え始めた。
「何でもいいの?」
柿狗くんが意外にも乗り気で、窺うように僕を見ながらも、聞いてきた。
珍しい。与えられなければいらないと言うのが柿狗くんだけれど、柿狗くん自ら聞いてくるなんて。
「何でもいいよ。あ、顔出し以外ね」
僕もハンバーグを口に入れる。
うん、ふわふわで美味しい。
すると柿狗くんは僕を見て、どうして?と言いたげな顔をした。
「ほら、柿狗くんは引きこもりだから顔出ししても、基本的に外に出ないから視聴者に会うこともないじゃない。でも僕は普通に外での生活もあるし。僕が身バレしたら、柿狗くんに繋がってしまうかもしれない。そんなの困るでしょ」
説明して、柿狗くんにご飯の最後の一口を食べさせようとしたけれど、柿狗くんは僕の方をじっと見た。
まだ何か納得できないらしい。
「なんで……俺?」
言葉足らずな柿狗くんの言葉を補完するなら、「なんで俺に繋がると困るのか」というところか。
「だって、僕がいない間に柿狗くんのファンが家に押し掛けてきたりとか、そんな事になったら大変じゃない」
「そんなこと……」
「起きない?いやあ、今の時代何があるかわからないからね。まあ、小学校とか中学同じだった人に見られてたら即バレしちゃうかもだけど、引っ越したから家まではわからない。柿狗くんは僕の名前呼ばないから、僕が顔出しさえしなければまあ、大丈夫だと思うよ」
柿狗くんは最後の一口を食べないので、仕方ないから僕が食べた。
声で知人に気付かれる事を考えたけれど、マイクを通した声って意外と違ってたりするし。僕もそんなに交友関係が広いわけではない。
最悪僕が身バレしたって、構わないんだ。問題なのは自衛できない柿狗くんが狙われた場合。
「なんで……名前呼ぶかもしれない……だろ……」
おや、柿狗くんがまた僕に質問してきた。
「呼ばないよ。それは心配してない」
「でも……」
「呼ばない。中二の夏休み。8月4日、あの日のことは僕、まだよく覚えてる。あの日から柿狗くんは、僕の名前を一度も呼んでいない」
「……」
静かになった柿狗くんの頭を撫でてあげて、食事の片付けに移る。
まず柿狗くんを抱き上げてベッドへ、それから食卓に戻ろうとして、ベッドに引っ張り倒された。
後ろから、不意の事だったので僕は呆気なくベッドに倒れ込んでしまう。柔らかいベッドとはいえ、後ろ向きに倒れるのは怖い。
「なあに、柿狗くん?」
少し興奮ぎみの柿狗くんは、僕の頭の横に座り見下ろしてきた。
僕が聞くと柿狗くんはソワソワしだす。
なんか薬でも盛ったっけ?心なしか柿狗くんの顔も赤みがいつもより強い。
「……お前の処女、ちょうだい」
「……つまり、僕がネコで柿狗くんがタチでアナルセックスしたいってこと?罰ゲームに、それがしたいってこと?」
僕が聞くと、柿狗くんは口をへの字に曲げた。
「なんでもって言ったじゃん」
子供みたいに口を尖らせる柿狗くんに、僕は笑みを零した。
柿狗くん、やっぱり熱があるのかな。普段はこんなこと言わないよね。
「いいよ、柿狗くんがそうしたいなら、僕は罰ゲームでなくたって、柿狗くんに僕のお尻を捧げる。だから聞いたんだよ、罰ゲームにして、いいの?って」
意味、伝わるかな。
伝わらないかな。
よくわかってなさそうな頭を撫で撫でしてあげた。
「いいよ、じゃあ次の生放送で、僕とアナルセックスしようか。慣らし……とかは、できないよね。いいや、僕自分でしてくるから」
でも、柿狗くんに前立腺とか弄られたら、僕それだけでメロメロになっちゃうだろうな。
女の子ともしたことない柿狗くんの童貞を、僕が貰っちゃうのも、結構いいよね。
「……したこと、あるの?」
少し眉をひそめた柿狗くんを見て、僕は理解した。僕が嫌がると思って柿狗くんは僕の処女ちょうだい、なんて言ったんだ。
だって、OK出されたの、完全に想定外って顔してる。
僕に今までの仕返しのつもりなんだろうけど、そうはいかないね。
「全然。自分のも他人のも、触ったことも見たこともない」
僕は起き上がり、柿狗くんの後ろに回ってぎゅーっと抱きしめる。いつもより体温が高い。
僕は柿狗くんを抱きしめるだけで、柿狗くんのことがわかってしまう。
「でもね、僕、柿狗くんのためなら割りとなんだって出来るんだよ」
「ふーん……」
不服そうな柿狗くんを無視して、ベッドに押し倒す。
熱が出てるから早目に眠ろう。
そのあと、熱の影響でいくら触っても勃起しない柿狗くんのおちんち○をいじり倒してお漏らしさせて、それから柿狗くんは眠りについた。
終わり