3/26 月曜日 晴れ

 今日で晴れて退院だった。もともと、怪我と言う怪我もなく検査のためだったので、むしろ長居だったと思う。
 わずかな荷物は兄貴が持って帰っていて、俺はほとんど手ぶらだった。実は面倒見のいい人なのだ、と気付いた。
 謹慎中で暇人な真崎が家まで送ってくれて、そのまま遊んだ。人を家に呼ぶなんて中学以来で、少し嬉しかった。
 帰ってみると綺麗に片付けられた部屋は、兄貴が片付けたんだろうか。兄貴はあの部屋を見たんだろうか。
 ただ気になっただけで、見てようが見てまいが、どっちでもいい。
 窓を全開にして空気を換気する。まだあの嫌なにおいがしそうで、真崎に気付かれるのも、俺自身も嫌だった。
 窓の外は穏やかで、振り返れば真崎がいるのかと思うと、変な感じだった。
 まるで普通の日常への入り口に立っているような。
 元に戻りたいと、思っている時点で普通じゃないのに。
「長谷」
 呼ばれて振り返ると、目の前に真崎がいた。
「今までひとりで、よく頑張ったな」
 な?
 俺より泣きそうな顔で、それでも優しく微笑む真崎の胸に抱き締められて、背中をぽんぽんと柔らかく叩かれた。

 涙はしばらく、止まりそうにない。