プロローグ2

ショタ・凌辱注意

 王国は、翌日に控えたリヒト王子の生誕祭でざわついていた。ひと月も前から準備が着々と進められており、いよいよ明日なのだから、落ち着かないのが国民の心理だった。
 けれども、夜が更ければ人々も寝静まる。二つの月が共に姿を消す真新月の夜で、町中も期待を隠してひっそりとしていた。
 その一方で、王家の住まう城の地下深くのとある部屋では一足早く宴が始まっていた。
「おい、交代だぞ」
「ああ、今イく」
「イくって、お前」
 今しがた、急な階段を降りてその部屋に来た男が苦笑した。限られた者のみが立ち入りを許されたそこは無機質な石畳に質素なベッドのみが置かれた牢屋のような部屋だった。
 そこで、男がベッドに座り、足元に跪いた少年の頭を鷲掴んでいる。少年は嗚咽をこぼしながら、男の強い力にされるがままだった。
「うっ、く、っ……はあ、残さず飲めよ」
 男はそう言うと少年の口に手を覆い鼻をつまんだ。少年が苦しそうにしながら、喉が動いて嚥下したのを見守る。
「全部飲んだか」
 男が聞きながら手を退かすと、少年は口を開き舌を出して、飲み干したことを示した。
「ああ、偉いな。俺たちが出来損ないのお前に、力を分け与えてやっているんだ。感謝しろよ」
 男がそう言うと少年は、男の剝きだしたままの肉棒にキスをして綺麗に掃除した。そうすると頭を撫でて褒めてもらえるからだ。

 少年は八歳だった。いつからそこにいたのか、少年の記憶の限りでは最初からずっとその地下室にいた。片時も離れない見張りがいて、食事と排泄、週にニ度の風呂以外にはなにもしないでただ時が経つのを待っていた。
 いつからだろうか、見張りの男が暇を持て余して、少年に手を出し始めたのは。
『お前は出来損ないだから牢屋に入れられたんだ』
 最初は壁に叩きつけられたり頭を小突かれたり、床にこぼした食事を舐めさせられたり、そんな事が続いた。
 少年は散々、出来損ないと罵られた。自分にはなにが足りないのか、考えても少年にはよくわからなかった。けれど、一つ思い当たる事がある。
 ある時、いつものように殴られて床に倒れたときに、頭をぶつけた。打ち所が悪く、額は割れて血が出始める。体温が下がり、薄れゆく意識の中で少年は不思議なものを感じた。
 後頭部を見張りの男が手で押さえる。すると、ジワリと熱を感じ、それから、傷はあっさりと塞がっていく。
 その後も度々、怪我をするたびに見張りの男が手をかざすと傷は塞がっていった。他にも蛇のように勝手に動くロープに縛られたり、なにもないのに身体の自由が効かなくなるとか、少年にとってそれはとにかく不思議な事だった。
 そしてそれが、少年の持っていないものであり、出来損ないの理由だった。
『お前は出来損ないだからな。そうだ、俺たちが力を分け与えてやろう』
 その日から少年は見張りの男たちの性奴隷だった。舐めて、しゃぶって、上手に出来れば褒められる。少年はそうして生きてきた。

「なあ、後ろの穴使わないのか」
「前に指を入れたが狭すぎて無理だったんだよ」
 交代の男が、パチンと少年の尻を叩いた。肉を撫で回して割り開くと、現れたのは汚れを知らない窄みだった。
「でもこいつ、リヒト王子と同い年だろう。八歳なら、もう使えるんじゃないか」
「……それもそうだな、一つ大人になる時だ」
 にやりと笑う男たちに、少年は言い知れない恐怖を感じた。
「なあ、ここからもっと力を分け与えてやろうか」
 男はそう言うと少年をベッドに寝かせた。骨と皮だけのような細い足を掴み、大きく開かせる。
「まあ傷付いたって治せる。一足早く八歳を祝って貫通式だ」
「慣らさないのかよ、鬼畜だな」
「初めては血まみれになるものだろ」
 先ほどまで奉仕していた肉棒が、少年の穴にあてがわれる。入らないことは明白だった。少年はなにが起きるのかよくわからなかったが、逆らっても痛い思いをするだけだ。ただ受け入れようと、目を瞑る。
「ハッピーバースデー」
 ぐずっ、後ろの穴が熱に開かれる瞬間、違うところに熱を感じた。
 熱く、焼けるようだった。言葉を知らない少年は、ただ痛みに咆哮する。
「っっあ゛ーー」
「なんーー」
「ちょ……ぎゃああああ」
 突然の出来事だった。少年の左腕が二の腕のあたりで突然もげて落ちる。そして、傷口から青い光が溢れ出し、それは狭い地下室中を満たすほど広がり、立ち上る。
 青い光は見張りの男を二人、焼き尽くした。同時に少し離れたところで青い光が迸る。リヒト王子の住まわれる部屋だった。
 その青は透き通るように美しく、月のない夜の国を照らす、妖しい光だった。

 翌日、国中を揺るがしたのは、リヒト王子が何者かに襲われたと言う報せだった。王子は左腕を失い、言葉を話すことも出来なくなった。犯人は見つかっておらず、事の真相は誰にもわからない。リヒト王子の生誕祭も取りやめになり、暗い空気が国を覆う。
 国民は噂した。あの美しく青い光がリヒト王子の左腕を奪った。
 それでは、もう一つの光はなにを奪ったのだろう、と。